楽に高い音を出すコツ
日本の横笛、尺八、中国の笛子、洞簫、西洋のフルートなど、初心者が最初にぶち当たる壁、それは高音が出せないことなのではないかと思います。
わたくしも最初は全然、オクターブ高い音がだせなかったので、一生懸命フルートを吹く方のブログ等を参考にして、唇の形や舌の位置に関心を払っていて、かろうじてむりやり音を出していました。
理屈的に息の角度は高め、息の速度は速めにすればいいわけですから、唇の息の出る部分を小さくして、口の中で息の通り道を狭めれば自然に息の速度が上がり、高い音が出せます。
しかし、それはものすごく苦し紛れに出している音でした。
そんなわたくしに出された処方箋は以下の通り。
「唇、舌を低音の時と同じ状態で、絶対に動かさないで、お腹だけ使って高音を出してみて。」
そして、こうもおっしゃいました。
「肩や手を絶対に動かすんじゃないわよっ!」(先生は若くて可愛いくてオシャレな今時の女の子ですが、早口で結構、厳しい~。)
つまり先生の意図は、肩が動くというのは胸式呼吸ですから、腹式呼吸だけでなんとかしてみろということです。また、手を動かすなというのは、吹き口を内側に少し傾けたりすると息の当たる位置が変わり簡単に高音が出せますが、この場合、音色が悪くなりますし、ずっとその体制では指が辛いですから、そういうズルはしちゃダメよってことなのです。
(でも、フルートはもともと吹き口を内側に傾きぎみにセットするそうですよね?似たような楽器でもいろいろ違いがあるものですね。)
そんなの無理よと半信半疑だったのですが、お腹に力だけいれて、音を思いっきり遠くへ飛ばしたら、それが意外と普通に高い音が出るんですよね。
もちろん、口の形は音の高低に影響を与えますし、口の形を全然変えずに高音を出し続けるのは乱暴な話なのですが、これがきちんとできることが大前提で、口の形はその次なんですね。
目からうろこでした。
(故)趙松庭先生の「笛子演奏基礎教程」というビデオCDを拝見しましたら、やはりこのことについて面白い例えをしていらっしゃいました。
「低音の息は、太極拳みたいですね。“ふうー”、って感じでしょう? これが高音になりますと“ハッ、ハッ、ハッツ!!!”って感じでね、少林寺拳法なんですよ」
(ここで、おちゃめに「ハッ!」とおっしゃる趙先生…^^;)
分かります?
わたくしは大学生のころ、体育の授業で太極拳をやらされましたので(必修科目だったのよね)、あの「また~り」とした感じは分かります。そして高音になると、これでは全然だめで、中国映画のカンフーみたいなノリでお腹に力を入れて、「ハッ!」と叫ぶつもりで吹かないといけないのですわ。
日本の横笛等の大御所はどんな例えを使って教えるのでしょう?
ブラスバンド部のフルート担当の先輩は後輩に何といって教えるのでしょう?
低音は手を温めるような「はぁぁ」という息、高音は遠くのろうそくを「ふぅぅ」と吹き消す息だというのはよく使う例えのようですが、ろうそくの火を消すのに「ハッ」っていう気合は必要ないので、気づきませんよねぇ。十二楽坊の廖さんなんて涼しい顔して吹いているけど、お腹は「ハッ!」と気合が入っているなんて知らなかったなぁ。
実はこの類の入門講座の映像は俞遜発先生とか、曾明先生とかも持っていているのですが、趙先生の話し方が一番、楽しかったですね。
分野はまったく違いますが、中国知的財産法の権威、(故)鄭成思先生の話し方を思い出しました。大御所とか神様の如く一目置かれているご年配の教授ほど、勝手気ままに話しているように見えるのに、実は大事なことはちゃんと話していて、突然、突拍子もない比喩を使うのよね(^^;
だから日本語に訳しにくい…まともに字面だけで翻訳するとその面白さが全然わからなくなってしまう。翻訳者泣かせですね。
こういう音楽教材、機会があったら是非、訳してみたいわ。