誰でも初めは簡単に弾けるけど難しい古筝
先日、テレビを見ていたら、中国音楽学院の張維良先生(笛子、洞蕭演奏家)と王中山先生(古筝演奏家)、二胡の周先生が出演されていました。
演奏よりも、司会者や出演者の方々となさっている漫才的な話が面白くて、ほんと笑い転げてしまった…
皆、自分がやってる楽器が最終的にはいちばん~だと思っているものね。
歴史の古さはやっぱり、笛なんですよね。
そして、どの国にもあるだろ~という普遍性。
張先生曰く、欧米の学生にも人気があるとか。
筝はアジアだったらどの国にもあるだろ~というポピュラーな楽器。
日本のお琴、韓国のカヤグム、ベトナムの琴(何ていうんだっけ?)などなど。
王中山先生はほんと、楽しい性格のお方で(専門の学生相手のレッスン中はどうか知りませんよ)、筝を弾いていなかったらお笑いタレントさんみたいで…
「誰でもできる簡単な楽器だろ」と突っ込まれると
「そうなんだよね、誰でも5分で弾けるようになるんだよね~」と笑傲江湖の一部分をご披露。
確かに、上から下へ一弦ずつ弾き下ろしてあるいは上げていくだけで、メロディーになっている(笑)
王先生曰く、楽器初心者にとって簡単な三大楽器は
「ピアノ、フルス、次に古筝」ということらしい。
押せば鳴るじゃん、のピアノ、吹けば鳴るじゃんのフルス、弾けば鳴るじゃんの古筝…
もっとも、逆にそこまで大衆的な分、秀でるにはとても大変だろうな~
弦楽器は、全くの初心者だと、弓引けば鳴るじゃんとはいかない(まれに、私もそうだったけど始めから簡単に鳴る人もいる)。
横笛や尺八系の楽器は、コツをつかむまでは音そのものが全く鳴らない(稀に、穴のあいたものなら何でも簡単に鳴らせる人もいるけど…)
「楽器が大きいから持ち運びに不便じゃん」と突っ込まれると
横から周先生が
「そうなんだよ、だからコイツ(王先生)は、何処へ行っても筝を借してくれ~って乞食みたいな生活してんだよな~」とからかう。
「そういえば、ヨーロッパ行ったときだっけ?機内に持ち込めなくて、無理やり手放されて、機内で泣いてたよな」とも言われ…
うん…その気持ちはよく分かる。日本の琵琶や中国の大三弦とかの楽器も、古筝ほどは大きくないけど、バイオリンみたいに完全に手荷物程度という大きさではない楽器は、無理を言って持ちこめる場合もあるけど、普通断られるので、「首が折れたらどうすんだよ、うわ~ん」と泣いた経験のある人も少なくはないんじゃないだろうか。
ちなみに大三弦の場合、うちの先生はアメリカへ行くときに一番後ろの席の後ろにそのまま置いてもらえたそうだ。
シンガポールのコンクールに行った姉弟子は、荷物として放り込まれて、出てきた時には首が折れていたそーな(可哀そうに…)。
何で「古筝選んだんだよ」との質問に王先生は
「一番上の兄が二弦、二番目の兄が三弦やってたから、僕は一弦で行こうと思ったら、当時、楽器が手に入らなくて諦めて、そうしたら親父が多弦やってみろと古筝をもってきた」からなのだそうな。
「でもさ、古筝っていうと、女の子の楽器って言うイメージでしょう、君のイメージとは程遠いじゃん」とからかわれると
「周瑜(中国後漢末期の武将)は古筝が上手かった~」と反撃。
確かにウィキで調べてみると周瑜は「若い頃より音楽に精通しており、演奏を聴いていると、たとえ宴会中酒盃が三度回った後でも僅かな間違いに気付いた。そのため当時の人々は「曲に誤りあれば周郎が振り向く」という歌を作って囃したという。」ということらしい。
私が疑問に思うのは、中国の酔っぱらいには音楽の上手い人が多いのはなぜなんだろう?
そして、とどめに王先生はこうお答えになった。
「ちまたで古筝弾いてる女の子は、男の先生(つまり僕)が教えてんだよ~」
確かに、古筝(お琴)というと中国も日本も女子っぽいイメージ。しかも綺麗な女子ね。
三弦は日本だとどうだろ、遊里の女性(やっぱり綺麗なお姉さん?)、それとも、歌舞伎の三味線方のお兄様、おじ様って感じ?
中国の三弦はね、やっぱ芸人のお爺さんがイメージされちゃうんだよね…
はっきり言って「土」(ダサいとでも訳しておけばいいのかな)
からかわれるたびに、反撃に出る王先生に司会者が
「先生、その熊みたいな手(爪をつけているから)で近寄らないでくださいよ~」と言われていました。
そういえば、王先生って、クマのぷーさんみたいだと思うのは私だけ?
でも、そういう可愛らしい実物像とはかけ離れた演奏中の王先生は、すっごくかっこよくて、私は大好きです(はあと)。
なんで、あんな熊みたいな手であんなに速く弾けるのかなぁ…