言語と音楽の関係

その国の言語はある程度、その国の音楽に影響するといいます。
例えば、言語の特徴がリズムとか、旋律の特徴とかにあらわれているというのです。

中国特有の言語は、中国音楽に豊富なリズムを提供し、その声調の特徴も中国旋律の表現及びスタイルの確立に貢献している。

それを聞いて、なあるほど、と膝を打ちました。

例えば、わたくし、大嫌いなんですよ、日本のカトリック教会のミサで歌う曲(実はわたくしは不真面目なカトリック教徒)。
全音符がず~っと続いて、一小節の間に歌詞を棒読みするようなあの感じ。
(実際には棒読みというのは言い過ぎで、一応歌っているわけですが…)
日本語だから「棒読み」ができるのだろうなと思っています。
中国語は棒読み不可能な言語です(^^;

わたくしの夫は、「ニイハオ」しか中国語が分からない人ですが、「中国語の会話はまるで歌っているようだね」だと言ったことがあります。
そうなんですね。
日本人の中国語初級者に中国語を喋らせると、中国人には何を言っているのかさっぱり分からないということの原因は、主として中国語には日本語の発音にない発音があるということと、中国語の声調(音の高低変化)が間違っているか、そもそも、声調を意識せずに棒読みしているということが考えられます。
わたくしの中国語は今ではちゃんと中国人に通じますが、今でも時々分かってもらえないことがあり、そういう場合は発音が変というより、声調間違いが多いです(てへ)。

中国人同士でも地方によっては、標準語を話していても声調が違ったりします(天津のお年寄りの声調は分かりづらかった~)。
例えば、わたくしの発音又は声調がヘンでも、きちんと相手の言葉を聞きとって文法に適った中国語を喋ってさえいれば、会話は問題ありません。ただ、最後に相手から「おねぇちゃん、どこの出身?」と訊ねられるだけです。
(中国人でも外国人より標準語の発音が苦手な人がいます)。

中国の領土は果てしなく広く、秦朝以来、漢族の言語文字は統一されてきたが、地理的、歴史的原因により、地域による言語の差はとても大きい。また、中国には56の民族がおり、その言語及び文化背景も異なる。これらはすべて、直接、各民族・各地に存在する様々な音楽言語スタイルと音楽言語美観に対する様々な理解を生むこととなる。例えば、民間声楽作品の音楽言語スタイルは、現地の生活言語、イントネーション、語気、習慣と完全に一致する。各地の民間器楽は、その初期の源泉が地方声楽の吟唱の趣と関係があるため、そのスタイルも間接的に地方言語と地方音楽審美習慣の影響を受ける。
修海林・李吉提「中国音楽的歴史与審美」第二版、中国人民大学出版社、2008年、245頁。

ちなみに標準語の声調は4つしかありませんが、地方言語のなかにはもっと多いものがあります。地方言語とは、有名なところで言えば、上海語、広東語、閩南語(福建省南部•広東省東部の潮州•汕頭一帯•海南島の一部•台湾の大部分に分布している方言)とかが挙げられますね。日本の方言のように別の地方の人でも理解できるというものではなく、外国語だと思った方がいいくらい発音が全く違いますので、中国人でも長くそこで生活しなければ理解不能です。

実はわたくし、広東音楽好きなんですが、広東語やが分かっている方が多分、曲も理解しやすいんでしょうなぁ。
先生方にいわせると、「南方出身の子に北方の曲を弾かせると、コイツ分かってないなぁと思うことがある」(逆もあり)ということがたまにあるといいます。
ある北京の楽器屋の主人は、京胡を弾きながら「俺は北京人で、京劇はガキの頃から知っているから、俺が弾くとサイコーだろ」とわたくしに言いました(^^;
(スミマセン、わたくしには、最高かどうか判断できる能力がありません…)
日本語が全くできない中国人が純粋な日本の古曲を弾くと「あれ、変」ということがあるというのも多分、日本語を全く知らないというせいもあるでしょう。

まぁ、言語や生活習慣を知らないからといってその地域の音楽を綺麗に弾くことは一生不可能ってことは絶対ないと思いますが(わたくしなんて、ドイツ語知らないのに、年末にベートーベンの第九コーラスに参加したことあるし、ウィグル語できないのに、新疆の曲弾いてるし…)、ただ、知っている方が、ほんのわずかな努力で綺麗な仕上がりになるんじゃないかなってことはあるような気がします。
子どものころから身についているイントネーションやリズムとかは頭で考える必要ないですものね。

わたくしに日本の童謡や唱歌を弾かせると、下手なりに聴けないこともないとうのは、旋律が簡単だという理由以外に、わたくしの母語が日本語だという理由もあると思います。

じゃ、外国人でもなるべく手っ取り早く、中国スタイルを身につける術はないものか…
↓こういうのはダメかな?

なかでも、童謡を研究対象にすると面白い。童謡の旋律とリズムは最も言語に近いからである。
修海林・李吉提「中国音楽的歴史与審美」第二版、中国人民大学出版社、2008年、245頁。

ちなみに、わたくしは童謡大好きなので、中国人にたまに教えてもらいます。
職場はほとんど中国人なので、「游鯉さん、ちょっと教えてください」とかって若い中国人同僚に相談されると「相談にのるかわりと言っては何だけど、後で一曲、童謡歌ってくれない?歌ってくれないと教えてあげな~い」と本気で言っております。(職権濫用???)

4 Responses to “言語と音楽の関係”

  1. くるみ より:

    岩波新書に中国の昔の音楽について書いてある本がありますが、
    そこに曲のメロディーと四声がピッタリ合っている曲が紹介されてました。

    西洋音楽は踊りを見ると分かり易いんですが
    中国音楽は歌を参考にすると良い様な気がします。
    音楽の必要というか成り立ちがヨーロッパ違うんでしょうね。

    その地域で生活していると その地域の音楽の肝も自然と身について
    くるんでしょうね、「習うより慣れろ」って感じで。
    そう言えば、歌舞伎等でも使われる
    拍子木で ゆっくりからだんだん早く叩いていく あのリズムを聞いているからか
    日本人は だんだんテンポを早くしていくリズムは
    教えなくとも かなりの確率で良い感じに演奏するそうです。
    あれも均等に早くしていくのでは無いので やはり聞き慣れなんでしょう。

    大学の時にレッスンで
    「出身地が南に行く程 休符のとり方がいい加減になり
     寒い所の人ほど きちんとリズムをとるので
     弾くのを聞いたら生活圏が分かる」
    と教授に言われました。
    (要するに 私の演奏がいい加減だった訳です、音の止め様等が(^_^;))

    という事で 生活する環境は音楽には非常に大事らしいです。
    その違いが分かれば いわゆる「風格」も身についてくるんでしょうね。

    因みに、全音符が続いて 一小節の間に歌詞を棒読みする様なアレが とても好きです。
    何だか聖歌?(讃美歌?カトリックだったら聖歌で良いですよね?)を歌ってるー、
    って感じがするので。(笑)

  2. 游鯉 より:

    くるみさん、こんにちは~

    >>「出身地が南に行く程 休符のとり方がいい加減になり
    >>寒い所の人ほど きちんとリズムをとるので
    >>弾くのを聞いたら生活圏が分かる」

    南の人はおおらかなのでしょうか…
    一般論として台湾人の友人は皆おおらかなんですけど…

    >>という事で 生活する環境は音楽には非常に大事らしいです。

    わたくしは今でこそ東京北京を往復するような都市生活圏にいますが、本当は都市へ進学したり就職したりする人が多くない田舎の育ちでして、夏と秋に地元ではお祭りがありまして、お祭りでは必ずおじさんたち(普段から音楽を仕事にしている人たちではなく、本当に近所のおじさんです)が笛や太鼓を鳴らして変な踊りを踊ってくれました。(大人になるまで、どの地域でもあるもんだと疑っていなかった…)
    譜面があるわけでもなく、年上が年下に指使いを教えて、耳コピで覚えてしまうというようなもの。
    今、思い出して歌ってみても、何拍子か分かんないようなリズムです。
    このメロディーがわたくしの出発点だとすると…恐ろしい。。。

    新疆の音楽も踊れると、きちんとリズムがとれるような気がしますが、先生は踊りまで教えてくれないしなぁ¥(^^;

  3. くるみ より:

    >何拍子か分かんないようなリズム
    通常のクラシック曲は都会のモノなので皆に分かり易い様に書かれてます。(というか、特色があり過ぎると聞いてくれる人数が少なく割に合わない)
    ので、余り演奏されたりCDで売り出されたりしないんですが、
    特に東欧の方には何拍子か数えられない様な曲が たくさんあります。
    バルトークが故郷の民謡をたくさん採譜してますが
    彼も「数え切れない」とか「100拍子」とかの感想をもらしています。
    歌と踊りの拍子が全然あってないのに
    曲の最後はどちらもピタッと同時に終わるんですよ。

    なので游鯉さんは より高度なリズムの中で育ったって事になるかも。
    東欧からは数学者等も多く出ているので
    これも複雑で数え切れないリズムが関係しているとかって話しも。

    新疆の踊りも見てる分には面白いですけど
    手の振りなんかと音楽が微妙にズレてますもんね。

  4. 游鯉 より:

    くるみさん、こんにちは~

    東欧の曲、こんど、探してみます!!!(見つかればいいけどなぁ…)

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